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朝は草の中
昼は影の隅
夜は空の果て

探せども探せども
あなたの姿はどこにも見えない
あなたは影すら残さない

ひっくり返せば食器の下にでも隠れているのだろうか
目を見張ればその空気の中にでもただよっているのだろうか

まばたき3つ
仰ぎ見る世界
見下ろす街並み
変わらない

ため息2つ
短く息を
長く息を
生きている

咎か罪か
まだ知らぬ

だけれども
まだ

そこにいる
そこにいる
そこにいる

いて欲しい…


朝は草の中
昼は影の隅
夜は空の果て

感じれば
まだそこに
そのままの君と

ほろ、ほろ、と
なく、声が
耳に
届く

そっと
風に
のって
Bitfoundation epilogue of 朝は草の中 昼は影の隅 夜は空の果て
 カーテンの隙間から陽が差し込む。


 柔らかな風が、全身を撫ぜた。
Bitfoundation 35 page of 朝は草の中 昼は影の隅 夜は空の果て
「私はベッドの中で布団にくるまり、目を覚ました。あなたの匂いのするこの場所で。何もないこの部屋で。あなたと過ごせたのはどれだけの期間だろうか。私の人生ほとんどを、あなたと共に過ごした気がする。いつも私を見てくれていた。いつも私を引っ張ってくれていた。

 そんなあなたに、私は甘えていた。いなくなってからわかった。私は自分ひとりじゃ何もできないこと。でも、あなたがいなくても、どうにでもなること。いなければいないで、私はひとりでどうにでもできる。それが無性に悲しくて、悔しかった。

 ずっと探していた。もうどこにもいないあなたの姿を。あなたと過ごしたこの街に帰ってきて、あなたとの思い出を辿って、意外に細かいことまで覚えている自分にびっくりしたりして。少し、照れくさかった。何度も泣いた。今も泣いている。もう二度と泣かない、なんてことは言わない。また、何度でも私は泣く。あなたを覚えている限り。

 でも、ひとりで生きていく。それしかないから。あなたはもう、私が触れられる場所にはいないから。でも近くにいる。そう、信じていたい。

”朝は草の中、昼は影の隅、夜は空の果て”


いつでも私のそばに」
Bitfoundation 34 page of 朝は草の中 昼は影の隅 夜は空の果て
”夜は空の果て”呟いて空を仰ぐ。空の果てとはどういう意味なのか。天井に煌く星々のことなのか。この澄み切った広がりのことなのか。”罪か咎か、まだ知らぬ。だけれどもまだ、そこにいる”いて欲しい。その願いは、空の果てまで届いてくれるのだろうか。あなたのいる、その場所まで。
Bitfoundation 33 page of 朝は草の中 昼は影の隅 夜は空の果て
何度かそんなことを繰り返すと、彼女の顔は面白いほどに上気していった。化粧がはがれるのも気にしないで、口元を豪快に拭う。自分に対する文句を、散々投げかけてきた。それに対して相槌を打っていると、それに関しても説教される。机に突っ伏した後も、彼はわたさない、と寝言でつぶやいていた。
Bitfoundation 32 page of 朝は草の中 昼は影の隅 夜は空の果て
飲まなくてはならないのだろう。日本酒など、飲んだこともない。決心し、口には運ぼうとおちょこを手にした瞬間、彼女が呼ばれた。振り向いている隙に、彼女のおちょこに自分のそれを注ぐ。注いでおいた、と訝しげな目をかわした。
Bitfoundation 31 page of 朝は草の中 昼は影の隅 夜は空の果て
酒は強い方ではない。それなのに、目の前に渡されたのは日本酒のとっくりだ。彼女は得意げに笑う。おちょこが二つ。それぞれに注いでいく。汗をかいたカルアミルクに手を伸ばそうとしたが、阻まれてしまう。飲め、彼女はそう言って自分のおちょこを軽く煽った。
Bitfoundation 30 page of 朝は草の中 昼は影の隅 夜は空の果て
店員の案内に従ってカウンターの席に座る。まるで暗号のようなメニューの中から、唯一名前を知っているカルアミルクを注文した。この熱気を正面から受け止められる気もしなかったので、顔を伏せ、時を待つ。しばらくもしないで、乱暴な口調とともにカルアミルクがやってきた。
Bitfoundation 29 page of 朝は草の中 昼は影の隅 夜は空の果て
沈んでしまえば暗くなるのは一瞬だ。山の向こうはまだ少しオレンジ色を残しているが、仰ぐ空は濃紺の深さだ。顔を下して店の扉に手をかける。引き戸をゆっくりと開くと、喧騒に包まれた店内の風景と、酔っ払いたちの発する臭気に思わず顔をしかめてしまった。
Bitfoundation 28 page of 朝は草の中 昼は影の隅 夜は空の果て
一人、水を蹴りあげる。細かく雫となって散った水滴は、乾いた石の上に黒い斑点を作り、自分の顔にもかかってきた。目の縁に、一滴。つう、と頬を伝って流れ落ちる。遠くから聞こえる子供たちの笑い声。そろそろ帰るか、そう言っている。
Bitfoundation 27 page of 朝は草の中 昼は影の隅 夜は空の果て

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