Send a message Send a message

Kige2's novels

recent pages RSS


 鬼はふと思う。
 ――――彼女は何故死んでいるんだ?
Kige2 6 page of 哀しき鬼の物語

 今宵舞うは銀髪赤瞳の鬼。
 憎悪に滾る眼は紅く、逆立つ銀髪は己の内にある鋭利さを体現したよう。
 舞台には横たわる彼女の他に観客はなく、ただ愚者の断末魔が響くのみ。
Kige2 5 page of 哀しき鬼の物語
 どんなに熱を吐き出そうとも、二度と彼女が熱を取り戻すことはない。
 それならば、少し無茶をしよう。
 自分がどんなに大怪我を負おうとも以前のように彼女が叱ってくることはない。
 それならば、暴れてやろう。
 後ろ腰に下げていた拳銃を手に取り立ち上がる。
 弾は十分。
 足りなければ自分を苛むこの熱も弾丸にして撃ちだしてやる――。
Kige2 4 page of 哀しき鬼の物語

 全身が業火に焼かれたように熱い。
Kige2 3 page of 哀しき鬼の物語
 今、その温かい微笑みは無く、体からも僅かな体温しか感じられない。
 流れ出る血液が体温を奪っているのだろう――抱いた体よりも自分の手にこびり付いている彼女の血の方が温かい。
 彼女の体と同じかそれ以下しかない自分の体温。
 それなのに何故か体の芯が無性に熱い。
 熱さに耐えきれなくなって、眼から口からその熱を吐き出す。
 いつまで経っても冷めることはなく、むしろ時間が経つにつれ、熱を増していく。
Kige2 2 page of 哀しき鬼の物語
 動かなくなった彼女の躯をかき抱く――。
 思っていたより体は小さく、とても儚げに感じられた。
 もっと彼女の側に居てやれば良かった・・・・・・。
 彼女はいつも妹のように甘えてきたけど、俺は気恥ずかしくていつも彼女を遠ざけていた。
 それなのに、俺が傷を負った時などは姉のように激しく叱って、その後は母のように優しく微笑んだ。
Kige2 prologue of 哀しき鬼の物語
 少女はその姿を唯々見ていることしか出来なかった。
 一時も目を離さずその演奏を目に焼き付ける。
 カリヨン奏者の腕が裂け、膝が砕け、透き通った〝 色〟が止まる。
 支えを失ったカリヨン奏者が椅子から転げ落ちる。少女がブリキの体を受け止める。
 その体は手足を失い、小さく、軽くなっていた。
 少女の流す涙が錆びたブリキに染み込む。
 腕の中に収まったブリキの表情は、心做しか穏やかであった。
 大時計の針が六時を指し示し、大鐘の〝音色〟が茜色に染まる街に響き渡る・・・・・・。
     
Vive hodie.
Kige2 epilogue of 〝In None Of Places That Are〟 the another ver.
 体は錆び付き、腕や足が歪んで曲がっているにも関わらず、カリヨン奏者は演奏を止めない。
 誰が為に、彼が為に。
 鍵盤を打つ拍子に手がもげ、足が折れてしまっても、腕を使い、脚を使い演奏は続く。
Kige2 9 page of 〝In None Of Places That Are〟 the another ver.
 更に奥へ進むと通路の幅が広くなり、その先にブリキの人形が一体、カリヨンの前に座り、演奏していた。
 ブリキのカリヨン奏者は上下二段に別れた鍵盤を両手両足で打つ。
 鍵盤に連動した三十七の鐘が揺れ動く。
 透き通った〝 色〟はその揺れる鐘から流れ出ていた。 
Kige2 8 page of 〝In None Of Places That Are〟 the another ver.
 白猫が少女の両手からすり抜け、透き通った〝 色〟が流れて来る方へ勝手に進んでいく。
 少女も白猫の後を追って、歯車に巻き込まれないよう注意しながら慎重に入り組んだ通路を進む。
 透き通った〝 色〟の流れが次第に大きくなる。
Kige2 7 page of 〝In None Of Places That Are〟 the another ver.

Jump to the previous novels Jump to the previous novels