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LOTUS_S's novels

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「命令違反は営巣入りよ!? 新入りのくせに逆らわないで」
母艦の近くであるためか、この通信は映像回線も同時に送られてきた。
コクピットの小さなモニタに映る戦闘オペレーターは、20代になるかならないかといった感じの女性である。
特徴的なのはその髪型で、ロングヘアに個性的なウェーブが掛かっている。形容するなら、まるで顔の両脇にでんでん虫をぶら下げているようだった。

「敵機が潜入してるんだ! 構ってられるか!!」
流石に1機だけでは敵機を全滅させられず、対空砲を破壊した敵機の何機かがそこを目掛けて母艦内部へと潜入していくのが見えた。
「第2防衛隊に任せなさい! これは命令です!!」
「そんな任務、さっさと受けるか! 艦内に入って敵を迎撃する。以上!!」
男は通信を一方的に打ち切ると、通信機のスイッチをOFFにする。そして機体にまだ僅かだが残弾が残っているのを確かめると、敵機の後を追うようにして母艦の装甲の隙間へと機体を進ませていった。

機体は丁度、東京駅でいうなら地上ホームの屋根の上に相当する辺りを屋根スレスレに飛行していた。
その少し先にぽっかりと空いた穴があり、大きさは機体が入るには十分なものである。
男はその手前で機体を停止させると、コンソールにある変形レバーに手を伸ばした。レバーの1本を操作すると機体のエンジン部分が途中から下方へ折れ曲がり、まるで脚のように屋根の上へと着地する。同時にエンジンの間にあったブロックが左右に分かれ、エンジンの前へ回り込むと主翼の下で固定された。ブロックも途中で折れ曲がり、先端からは5本の指が付いた手が現れる。右手には機銃が変形した小銃が握られていた。
「よし、この先だな」
まるで飛行機に手足が生えたような奇妙な形態になって、機体は穴の中へと進んでいく。そしてしばらく進んだ時、突如として視界が真っ白になった。
「しまった、敵の攻撃か!?」
ike_writer 10 page of 東京駅~愛・おぼえていますか~
間もなく、敵影らしき交点がレーダーに表示されていく。手短な相手へ照準を合わせ、ロックオンするとミサイルの発射ボタンへ指を掛けた。左右の主翼に吊り下げられたミサイルが数発、白い奇跡をたなびかせながらうねる様に敵の喉元へ食らいついていく。パパッとオレンジ色の光球が生じたかと思うと、次の瞬間にはもう消えていた。後に残るのは数秒前まで敵機であった残骸とその破片である。

「3機撃墜」
「やるー」
「ホント、天才だぜ!」
僚機もそれぞれ戦果を挙げたのか、歓声が通信機から飛び込んできた。その声にあまりノイズが入っていないというのは、まだ僚機がそう遠くないという事だろうか。
「デルタ1より各機へ。エリア108に大型戦艦出現。艦載機多数、本艦に向けて接近中。至急迎撃に向かえ」
しまった、敵の陽動作戦に引っ掛かった。男は母艦の方へさっきとは比べ物にならない数の敵が襲来しているのを知って、前進しすぎた事を悔やんだ。今戻ったとしても母艦の対空迎撃網を掻い潜り、敵が母艦表面に取り付くのを排除するのは難しい。しかし、ここで自分が戻らなければたとえ敵の戦艦を沈めたとしても戻る場所がない。
男は決断し、スロットルレバーに手を掛けた。機体は反転し、母艦の方へと進路を180度転換する。

「デルタ1よりスカル13へ。あなたの担当は敵戦艦の迎撃の筈よ? 速やかに持ち場へ向かいなさい」
たった1機の機体が戻ったところで、敵機をどれだけ相手にできるかはたかが知れていた。
下手をすれば集中攻撃を受け、何も抵抗できぬまま撃墜されてしまうだろう。
それでも男は意を決し、母艦を救うために戻ってきたのだ。
けれども殆どの武器を撃ち尽くした男を待っていたのは、さっきの戦闘オペレーターからの叱責だったのである。
「冗談じゃない! 助けてやったのにそんな言い方ってないだろ?」
ike_writer 9 page of 東京駅~愛・おぼえていますか~
異次元の漆黒は男の全身を包み、何処までも果てしない彼方まで続くかのようだった。
その果てなど無いかのように思われた時、男の意識は誰かの声で混濁の中から拾い上げられる。
「……おい、聞こえてるのか!? 寝ぼけるんじゃない! あと少しで戦闘宙域なんだぞ!!」
「りょ、了解、先輩!」
……先輩だって? 男は今、自分が咄嗟に答えた言葉を思い出す。
どうして自分は、この声の主を「先輩」と呼んだのだろうか。初めて聞く声の主だというのに。
そして男は自分がどこにいるのかと周囲を見回して、とても窮屈な場所へ閉じ込められている事に気が付いた。
両脇と前には様々な機械が並んでおり、頭上にはガラス越しに宇宙の暗闇が映し出されている。
そして自分の両手が掴んでいるのは、恐らくこの機械の操縦桿らしき物だった。
何もかもが初めて見る機械。しかし男は何故か、この機械が何であるかを理解し操縦方法も知っていた。
そう、これは自分の愛機であると。

「デルタ1よりスカル、エンゼル、アポロ小隊各機へ、コース修正308プラスA15。
30秒後に射程圏内に入る。迎撃体制に移れ!」
通信機の向こうから、戦闘オペレーターの声が入ってくる。まだ若い女性の声だが、芯のあるしっかりとした声だ。
「リーダーから各機へ。聞いての通りだ、これより迎撃フォーメーション17に移る。いいな!」
さっきの先輩からの通信である。この先輩パイロットはどうやら、小隊長を任されているようだ。
見れば斜め前方には、垂直尾翼にドクロが描かれた機体が隊列の先頭に立って飛行している。
その機体が直後に強烈な勢いで加速を始めると、他の機体も一斉に加速を始め上下に散開していった。
ike_writer 8 page of 東京駅~愛・おぼえていますか~
「な、なんだってんだ? それにその格好はまるでアレじゃないか、ええとええと……そうだ、あや……!?」
興奮してまくしたてる男の言葉を遮るように、衝撃が辺りを包む。ガクンと大きな振動が続き、遠くの方で何かが破壊されるような音が響いた。
「……しゃべらないで。舌を噛むから」
身体にフィットした白い宇宙服を着た少女は、赤い瞳をこちらに向けている。透き通るような水色のショートカットは少しサイドにシャギーが入っている風変わりな髪形だ。

振動音はまだ奥の方で続いている。そしてしばらくすると、そちらから金属片が流れてきた。
「もっと大きな破片が来る。あなたはここから逃げて」
「え? で、でも何処へ?」
すると少女は壁に手をかざす。壁の一部がスッと開いて、中から電卓のようなパネルが出現した。少女がパネルのボタンを片手で素早く押していくと、その横に黒い画面が出現して『脱出口』という文字が表示される。
「ここへ入れば、あなたは逃げられる。私はここで、破片を食い止める」
壁がまるでドアのように横へ開き、その先には暗い通路が横方向に延びていた。少女は左手で男の右手首を掴むと、何のためらいもなく男を通路へと放り投げる。
「うわっ……!」
「時間がないの。……さよなら」
その言葉を最後にドアは固く閉ざされた。真っ暗な空間に押し込められた男は、かつてドアがあっただろう辺りをドンドンと拳で叩く。
「待ってくれよ! 何がなんだかさっぱりだよ! おい、聞こえてるんだろ、開けてくれよ!? 返事をしてくれよ、あやな……!!」
男がドアの向こう側にいるであろう少女の名を叫ぼうとした時、向こう側で大きな爆発音がした。
少女からの答えはない。男はこの時、ドアの向こう側の光景を想像して絶句した。

やがて男が何もできぬまま立ちすくんでいると、通路の明かりが点灯を始める。
「な、何なんだよ、今度は……」
ike_writer 6 page of 東京駅~愛・おぼえていますか~
わたしはふと、手元にある携帯端末を手にしてみた。
こうした電子機器を使うのはわたしの流儀にそぐわないのだが、最近はこうしたものを使わないと連絡もできない相手がいるというのが寂しい。
例えばわたしは電車の中でペーパーバックを読むのだが、最近は紙の本を読むのが珍しいのか視線を感じる時がある。先日もわたしが7432回目の『華麗なるギャツビー』を読みふけっていると、隣にたまたま居合わせたサラリーマンが手元から手帳大の携帯端末を取り出して画面を見始めた。
それだけならいいのだが、時折「うんうん」とか「そうそう」だのと相槌を打ちながら、画面をじっと見つめている。
ただの雑音とばかりにそれを無視する事もできたが、わたしにはどうしてもそれが気になってしょうがなかった。
そしてサラリーマンの手元を見ると、端末の中で少女がにこやかに笑っていた。
少女といっても現実のそれではなく、3Dのポリゴンで描かれた少女である。
サラリーマンはその少女と会話しながら、相槌を打っていたのだ。
わたしはその光景がにわかには信じがたく、反対側に座るサラリーマンを見た。
そのサラリーマンは携帯端末を使い、「隣の男が紙の本読んでる。時代遅れwwwwww」と画面に入力していた。

いっそこんな世界は今すぐにでも滅亡すべきだ。わたしはこれで245回目となるつぶやきをした。
そんな事より、今は違う事をしよう。携帯端末でネットに接続すると、わたしはとあるページを探した。
世界中のあらゆる人々のつぶやきが残されたページ。
このページを訪れるのも久しぶりなのだが、わたしにはとある確信があった。
仮にわたし以外の9人がこれを使っているのなら、何らかのつぶやきを残している可能性がある。
それで他の9人を知るてがかりになるかも知れないと。

該当しそうなフレーズであれこれ検索していると、数時間前のつぶやきでそれらしい物があった。
lovinkiller 12 page of 「西暦23xx年」「世界は滅亡した」
「突然、何をするんだ!? 今の衝撃で貴重な栄養と脳細胞が失われたぞ。謝罪と賠償の栄養分を要求する」
「さっきからあんだけ食っておいてまだ言うか!? それにそもそも、お前のアイディアとやらは過去の作品のつぎはぎだらけで新機軸も何もないじゃないか!」
ベルヴィナは僕の指摘につまらなそうな表情を返した。
「ふん、凡人にはパロディとかオマージュとかインスパイヤという発想はないようだな」
「さっきのはそういう次元じゃなく、まんまだろ! パクリだろ!!」

僕はベルヴィナの語るアイディアというか与太話にここまで付き合った自分を少し後悔した。
「お前が何を目指しているか知ろうとも思わないし理解もしないが、誰に向けて何を書きたいんだ?
あれだろ、手軽に誰もが読めてそこそこ面白ければいいんだろう? 更にうっかり人気が出ようものなら映像化したり関連商品を出したりして儲けようだのと企んでいたりする。
お前が読ませたいのはせいぜい、今の中学生から高校生程度がターゲットなんだろう? だったら大丈夫だ。その位の年齢ならさっきのアイディアの原点を知るものは少ないし、原点を知っていてニヤリとできるのはその親位の世代だ。親子の間で元ネタ探しの話題にはなるだろうが、お前が危惧するようなパクリ騒動にはならない」
言われてみればそんな気がしないでもない。確かに僕が書こうとしている作品は主に中高生に狙いを絞ろうとしているところはあるし、その方が僕の表現能力では難しくもない。
「それに、だ。お前が書いた作品には誰かが挿絵を付けるんだろう? 話の内容が他の作品と似通っていて独創性が低くても絵柄で気に入ってくれる客はいる。安心しろ」
「おいおい、幾らなんでもそれはないだろ。そこまで言うか、この人でなし!」
「とんでもねえ、あたしゃ悪魔だよお」
ベルヴィナはしれっとした顔のまま言いのけた。
mudhater 14 page of テスト
流石に4度も尻尾を掴まれるのは耐えられないのか、ベルヴィナはミカン大福を我慢しつつ話を続ける。
「3万年の時を超え現代に戻った主人公達だが、何の力もない彼らにアトランティスを止めることはできなかった。
だが、かつてムー大陸があった所へ行ってみると巨大な遺跡が残されていたのだ。主人公達を追ってきたアトランティス軍にその遺跡は破壊されてしまうが、その中から巨大な鯨が現れる」
「巨大鯨キター!」
「主人公達が鯨に乗り込むと鯨はロボットに変形し、アトランティス軍を瞬く間に全滅させる。主人公達と再びこの世界で会うため、ロボットと美少女は3万年を遺跡として過ごしていたのだ。
しかしこの超エネルギーを巡る戦いは、ムー帝国とアトランティス帝国だけの間に終わらなかった。
主人公達とは並行する時間軸からやってきた新生ムー帝国。彼らは自らの力でアトランティスを破り、更に平行世界をも侵略すべくやってきた。
更に国連軍はムー、アトランティス、新生ムーに対抗するため決戦兵器を密かに建造していたのである」
「ど、どんな決戦兵器なんだ……」
「それこそ、空中、水中、陸地をも移動可能な万能戦艦! その先端には鋭角な回転衝角を備え、主砲である冷線砲の他にも熱線砲や電子砲、更には原子砲も用意されている」
「……」
ここまできて、流石の僕でも気付き始めていた。
そう、これらはことごとくムー大陸やムー帝国を題材とした過去の作品の寄せ集めじゃないだろうか、と。
「ところで話を戻すが、巨大ロボットは鯨に変形するんだな? なら、その時何かこう、変形時のキーワードというか合図みたいなものはないのか?」
「そりゃあるだろ。例えばそう、ゴッドホエール・チェェェェェンジ!! とか」
僕は思わず、そばにあったスリッパでベルヴィナの頭を叩く。
すぱこーん、と妙に軽いが心地よい音が響いて聞こえた。
mudhater 13 page of テスト
鯨に変形する巨大ロボット。その発想は正直、僕の中にはなかったものだ。
一体どんなデザインになるのだろうかと想像しながら、ベルヴィナの話を聞くことにする。
「3万年前のムー帝国でアトランティス帝国と戦う主人公達だったが、結局アトランティスに猛攻に耐え切れずムーは滅亡寸前にまで追い込まれてしまう。
そこでムーの帝王は最後の手段として、超エネルギーの源を遥か未来へ転送させることにした。
アトランティスが狙うそれを未来への希望とするために」
「ほう……」
「かくして超エネルギーは主人公達と共に、再び現代へタイムスリップすることになった。
一方でムーに残った美少女と巨大ロボットは残された力を使い、アトランティスの侵攻部隊と共にムー大陸そのものを破壊する。こうしてムー帝国とその大陸は遥か海の底へ沈むことになった」

イチゴ大福を2個胃袋に収めたベルヴィナの次の獲物は、ミカン大福だった。
「ん、これはまた酸味がいいアクセントになっているじゃないか。さっきのよりこっちの方がいいかも」
「お前の味の好みはどうでもいいから、先を続けろ」
mudhater 12 page of テスト
「この異常現象を止めるには、主人公達がロボットの操縦者として3万年前のムー帝国へタイムスリップしなければならない。そこでアトランティス帝国を倒せば現代の異常現象も発生しなくなるわけだ。
美少女は現代に生き残るムー帝国の末裔を探すため、3万年前からタイムスリップしてきたのだという。
そして巨大ロボットはムー帝国の技術力を集めて作られた、戦闘要塞兼タイムマシンだったのだ。
主人公達一行を乗せた巨大ロボットは現代から遥か3万年前のムー帝国へタイムスリップする。
そしてムー帝国とアトランティス帝国との戦いに巻き込まれていくのだ」

「ううむ、いささか古い感じもするが逆にそれが新鮮な気もしないでもない。それにしてもだ、どうしてタイムマシンが巨大ロボットなんだ?」
ベルヴィナは僕の質問をそっちのけに、とっくに興味は目の前にあるイチゴ大福へと変わっていたようだ。
イチゴ大福を手にギラギラと目を輝かせるベルヴィナに対し、僕はおもむろに尻尾を掴む。
「きゃう! ……な、何をするのだ!? 私の弱点を1日で3度も責めた人間の男は256年振りだ!」
「そんな事はどうでもいい。とっとと続きを聞かせてくれ。でないとこの手を放さんぞ」
僕がぎゅっと尻尾を掴む手に力を込めるとベルヴィナは上気したような顔を縦に何度も振り、分かったというジェスチャーをした。
「どうして巨大ロボットなのかって? それは、そのロボットがムー帝国の神像だからだ。ムー帝国の超エネルギーで動くそれは独自の意思を持ち、更にはロボットから巨大な鯨にも変形できる」
「な、何故、鯨に……?」
「その方がカッコイイからだ」
mudhater 11 page of テスト
ベルヴィナは草大福の粉が唇の端に付いているのも構わず、僕に話し始めた。
「さっき、ムー大陸がどうのという話があったので、それでアイディアが浮かんだ」
「ふむふむ」
「まず主人公なんだが、彼はムー帝国の末裔という設定だ。しかし彼は自分にそんな出生の秘密があるとは知らず、日常を生活している。
ある日、そんな彼の耳に幻聴が聞こえる。それと時を同じくして、世界各地で様々な異常現象が発生するようになった。主人公も火山の噴火に巻き込まれそうになるが、謎の美少女が彼を救い出す。
美少女によって救われた主人公は、とある島に辿り着く。そこには彼と同じように集められた4人の仲間と、巨大なロボットがいた」
美少女とロボットか。ありがちなネタではあるが、最近は逆に少数派かも知れない。
ベルヴィナは緑茶のペットボトルを飲み干すと更に話を続けた。

「そこでさっきの美少女が、驚愕の事実を伝える。主人公達は3万年前に滅んだムー帝国の末裔で、今起こっている異常現象はムー帝国とアトランティス帝国の戦いによって引き起こされているという事を」
「……な、なんだってーっ!」
僕は思わず叫んでしまった。その位、ベルヴィナの話す展開に引き込まれていたのだろう。
mudhater 10 page of テスト

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