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OKina001's novels

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「オーケイ、了解分かった承知、ともかくそこ動くなよ」
 言いながら僕は部屋の隅の衣装ケースに手を突っ込んで、今アメリカにいるウチの親父から送られてきた土産物を取り出した。
 まずはMIT(マサチューセッツ工科大学)購買部ご謹製の特殊スポンジで出来た耳栓。
 それを両耳に突っ込み、もうひとつの土産物を取り出す。
 S&WM500マグナム、十インチ銃身のハンターカスタム。
「男子たるもの、これを持って野山を駆け巡るほど逞しくなって欲しい」というメッセージと共にいきなりこれが送りつけられてきたときには、熊や狼より先に警察に追われてこのコンクリートジャングルを駆け回ることになるんじゃないかと思って怯えた物だが、いつか役に立つだろうと思って持っていて良かった。
 そしてヨーロッパ地方を巡っている母親から送りつけられてきた「マルキド・サド五歳の頃の小指の骨」と「ヘンリー・ダーガー十七歳の頃の涙」をブレンドしたものを納めた強化ガラス弾頭を装填、シリンダーを軽く手首で元の位置に戻すと振り向きざまに引き金を引いた。
「どかん」としか表記のしようのない衝撃波を伴った銃声が狭い六畳一間に轟き、ベルヴィナの髪の毛を軽く舞わせたが、当人はさきわかめを食い尽くす事に専念してた。
 ネネエルがのけぞる。
「なにするです! 私がせっかく悪魔の魔の手からあなたたたたたたたたたた」
 額に穴が空いた状態で、しばらくディレイ状態だったネネエルだが、自分で自分の後頭部を「ぽん」と叩くと額から弾頭が飛び出して畳の上に転がった。
「まったく、何て汚らわしいものをぶち込むですか!」
 流石天使。世界一の童貞アーティストと、世界一のリア充変態によって「聖別」ならぬ「汚染別」された程度の弾丸では喋るのを止める事も出来ないらしい。
「やかましい、僕の作家の道を妨害する物は何者でも粉砕するんだ!」
mudhater 16 page of テスト
「ひとつは、ムー帝国の子孫が地上人類に対して宣戦布告を行う話だ」
「ふむ」
「ムー帝国の皇帝は幼女で、おつきの武官はイケメン、さらに彼を慕う美女の女官には双子の妹が居て、これが実はムー帝国を裏から操ってきた秘密結社の一員で、本来のボスは『闇皇帝』と呼ばれる宇宙生命体なのだ、彼……いや、『それ』自体は単に飢えているだけで、捕食行為がしたいのだが、その際に発生する莫大な力と、反動で出てくる黄金が人々を狂わせてきた、そしてその力は今でも影響を及ぼしている」
「なんか随分汚い話だな」
「五月蠅い、本格ファンタジーの裏設定というのはそう言う物だ」
「で、宣戦布告をしてどうする?」
「まあ、色々合って、地球の平凡な高校生で、悪魔が召喚できることだけが唯一の取り柄の高校生の所に『妹』としてやってくるのだ、そして地上のことが良くわからない幼女皇帝と僕…………じゃなかった主人公との生活が始まる」
「…………その『色々あって』の部分が大事ではないのか?」
「それは書きながら考える、ライブ感覚という奴だ、ブログとかで発表して、反応を見ながら考えていけばいい」
「…………」
 何故か、ヴェルヴィナは僕のほうをみて溜息をついた。
「で、もう一本というのは?」
mudhater 7 page of テスト
「では書け、急いで書け、死ぬ気で書け、頑張れ」
ベルヴィナはチョコレートを食べ、指までねぶる。黙っていればモデルがつとまるような美人なのに酷く子供っぽい。
まあ仕方がない。悪魔というのは結構厳重なルールがあって、召喚主がだした食べ物以外は食べてはいけないし、前の主が何も食わさなければ腹ぺこのまま動くことになる。
しかも今時「正しく」悪魔を召喚できる才能の持ち主も減って、年がら年中腹ぺこ状態なのだ。
実際僕が召喚しなければ彼女は飢えで「死んで(つまり悪魔としての能力を無能のレベルにまで引き下げて存命すること)」しまうしかなかったほどだ。
「そのつもりだよ、でも、アイディアがふたつあるんだ、しかもどっちも素晴らしいアイディアで今すぐ書きたい」
「選べ、男の仕事の八割は決断だとこの前テレビで探偵が言ってたぞ」
「変なことは覚えてるんだな」
「なんだ、そういうそうだんなのか、では……」
「まてってば」
 そのままあたりめの袋を掴んで帰ろうとするヴェルヴィナの尻尾を、僕はむんずと掴んだ。
「あうんッ!」
 色っぽい声を上げて彼女がへたり込む・
「ば、ばかものっ、そ、そこは触るなといったであろうがっ!」
mudhater 5 page of テスト
腕時計を確認する……きっかり三分後「けしからん! 私をなんだと思っているんだ!」と言う声と共に鏡の片方から手が伸びて、チョコレートを掴んだ。
にょきっ、とまるで鏡の表面から生えてくるように、引き締まった腕と肩、そして気の強そうな顔に眼鏡という美人が姿を現す。
漆黒の肌なのは、何でも由緒正しいゴルゴンラードとかいう高貴な血筋の故らしい。
名前はベルヴィナ。僕が小学校の頃にオモシロ半分で召喚したら出てきた悪魔だ。
mudhater 3 page of テスト
そうだ、「あいつ」を呼び出せばいいんだ。
僕は「あいつ」を呼び出すべく、古い大きな姿見をふたつ、部屋の隅から引っ張り出した。
鏡を合わせるように配置し、間に昨日コンビニで買ってきたあたりめを一袋と、チョコレートを一枚置いてみる
mudhater 2 page of テスト