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マナブたち、一年生は誰から自己紹介をするかモジモジしていた。
すると諏訪部長が問答無くマナブを指差した。
マナブは突然の指名に慌てて椅子から立ち上がった。ガタンと大きな音がしたのを聞いて隣に座っていたカオリがくすっと笑った。
「あのう、どうも、い、一年の伊藤マナブといいます。よろしくお願いします」
マナブは見る見る顔が赤くなっていくのを感じていた。それを見ていたカオリは指でOKサインを出していた。
ただ、その顔にはまだ、さっきの笑い顔が残っていた。
マナブはそれに気が付き「笑うな」と目で訴えたが、カオリはそれを無視してすくっと椅子から立ち上がった。
マナブは慌てて自分の椅子に座った。
カオリが自己紹介を始めた。
「はじめまして。渡辺カオリといいます。私はそこにいらっしゃる諏訪部長の男性バージョンです。つまり、体は男で、心が女です。とりあえずは、女の子として扱ってください。よろしくお願いします」
辺りから「ほぉー」という驚きに満ちた小さな声が響いた。
ただし、マナブと諏訪部長、それに菊池だけは声を上げなかった。
諏訪部長とマナブはカオリの正体を知っているからそのわけもわかるが、なぜ菊池が声を上げなかったのか。
その理由は菊池の顔を見るとわかった。菊池は驚きのあまり声すら上げることが出来ないでいるようだった。
しばらくして、我に返った菊池はすぐさま、マナブのほうを睨みつけた。
その目には何かを問いかけているように見えた。
_ki 16 page of 恋×2 <こいこい> 
「さてと、ここにいる先輩たちの紹介は終わったけれど、もう1人二年生がいるんだが・・・」
諏訪部長はそう言いかけたときにドアが勢いよく開かれた。
「ごめん」
誰かがそう言って美術室に入ってきた。
「いやいや、遅刻しちゃったかな、ははは」
マナブが声のする方を振り返るとそこには金色の髪の毛に青い瞳、白い肌、バランスの取れたボディーがあった。
外人、いや白人、それとも・・・やっぱり、外人がひったりの女の子だった。
「遅いぞ、何してた」
「えへへ、ちょっとね」
諏訪部長が耳元で何かをつぶやいた。たぶん、部長の言っていた二年生だろう。
「どうも、どうも、遅れちゃってごめんね。えっと、二年の三枝エミリです。見栄えは100%の外人に見えるけど実際には75%です。よろしくね」
少しウェーブのかかった金色の髪をかきあげて、エミリは自己紹介をした。
エミリは自己紹介が終わるとちょうどマナブの向かい側に置かれていた椅子に座った。短めのスカートからは白い長い足が伸びている。
マナブは目の置き所に困ってしまった。
「以上で二年、三年の自己紹介は終わりだ。次は入部希望者のみんな、簡単でいいから自己紹介をしてくれ」
_ki 15 page of 恋×2 <こいこい> 
池の奥にはまた、鬱蒼とした木々の森が広がっている。
僕は朽木のほうにむきなおした。
朽木はジェスチャーで自分が向こう側に行くから援護するように指示していた。
僕は了解と返事をした。
いっせいに大きな岩のほうに向かって走り出す。
「パン、パン、パン」
「パン、パン」
また銃声が響いた。
僕からは朽木の姿が大きな岩の陰になってしまい見失ってしまった。
急いで大きな岩のところに駆けつけた。
大きな岩の陰で朽木は腕を押さえてうずくまっていた。
「大丈夫ですか」
「大丈夫、ただのかすり傷だから」
「銅山は」
「逃げられた・・悔しい」
「悔しがっているときじゃないですよ。早く、傷を見てもらわないと」
「大丈夫っていっているでしょ」
「そうはいきません」
僕は嫌がる朽木を説き伏せて教団の建物のところまで戻った。
すでに職員の通報によってパトカーと救急車が到着していた。
僕は朽木を救急士のところに連れて行き手当てをしてくれるように頼んだ。
緊張からほぐれた僕はその場にへたり込んだ。
いままで、銃撃戦など経験したこともなかったし、ましてや、銃で人が撃たれたところなど見たいと思ったこともなかった。
確かにテレビや推理小説の影響で刑事になった僕だったがいざ現実にそれらを経験すると頭がそれらのことを理解できていない自分が居ることを改めて知った。
_ki 40 page of 緋色の骨
「なんで、拳銃を二つも持ってるんですか。警官といえども拳銃の携帯は一つだけでしょ。それって、違法ですよ」
「まあまあ、硬いこといわないで。これ、護身用だから」
朽木はそう言って、僕に拳銃を手渡した。
「小さいっていっても22口径だから身を守ることぐらい出来るはずよ」
「無理ですよ。僕、支給品のリボルバーしか、射撃訓練をしていないんですよ。これって、オートマチックですよね。撃ったことないです」
「大丈夫、大丈夫。引き金を引けば玉が出るところは一緒よ」
朽木はそのまま、本殿に向かって走り始めた。
僕は慌ててその後を追った。
しばらく参道を行くと鬱蒼とした木々が突然、途切れた。目の前には本殿であったはずのものが、現れた。
それは建物の半分が爆発で吹き飛ばされた、見るも無残な姿に成り果てていた。
「坊や注意して」
朽木の声が飛んできた。
僕はまだ、白い煙を黙々と上げている本殿の吹き飛ばされたところに目をやった。
煙の向こうに何か黒い人影のようなものが見えた。
「朽木さん、銅山です」
「どこ」
朽木が叫ぶ。
「本殿か裏側にある大きな岩のほうに人影が移動していくのが見えました」
「坊やは私を援護して、後ろから来て」
「わかりました」
僕は人影が走り去った大きな岩を注意しながら朽木の後を追った。
「パン」
乾いた銃声が鳴り響いた。
朽木はそばにあった小さな岩陰に隠れた。
僕はそばに植えられている小降りの松の木の影に身を寄せた。
大きな岩のほうを見た。そこは本殿裏に作られた庭園の一部だった。
脇には池があり、石灯籠がいくつか池の中に立っていた。
_ki 39 page of 緋色の骨
階段から教団の職員たちが逃げ降りてくるのが見えた。
僕は安全に非難するように彼らを誘導することを優先した。
ほとんどの人が野外に非難したことを確認して、僕は朽木の後を追った。
朽木はすでにロビー奥にある前面ガラス張りの窓を通り過ぎたところだった。
このビルのロビーは奥に立っているこの教団の聖地とも言うべき本殿が見えるようにガラス張りになっていた。
僕が朽木の追いついたのは本殿に向かう参道脇の大きな木の陰だった。
朽木は本殿のほうを向いている。そして、その手にはなぜか拳銃が握られていた。
「朽木さん、どうして拳銃を携帯しているんですか」
「なによ、いつ何時必要になるかもしれないから、常時、バックに入れているのよ」
「なぜ言ってくれなかったんですか。僕、拳銃の携帯許可なんて取ってないから今日は持ってないんですよ」
「え~、相手は爆弾を使うぐらいのやつよ。万が一を考えないといけないじゃない」
「そんな、制服警官じゃないんですから、常時携帯なんて出来ませんよ」
「しょうがないな」
そう言って、朽木はスーツのスカートの裾を捲し上げた。
「何してるんですか、朽木さん」
「なにって、坊やが拳銃持ってないって言うからこれを貸してあげようと思っただけよ」
朽木は太ももの内側に隠していた小型の拳銃を手に取った。
_ki 38 page of 緋色の骨
諏訪部長は自己紹介を終えると、黒髪の美人が椅子から立ち上がった。
なぜか、彼女は次の行動をとるときに必ず髪の毛を指ですくった。
「えー、三年の佐々木です。おもに銅版画を描いています。よろしく」
佐々木の声はとても冷たく透き通るようだった。次に自己紹介を始めたのはあの姉妹だった。
「こんちわ」
「こんちわ」
「二年生です」
「そう、二年生」
「名前は島津」
「向かって右がミカ、左がミキ」
「一卵性双生児で~す」
「2人で彫塑をしていま~す」
相変わらず、おもちゃの首輪と鎖をしている。
次に自己紹介を始めたのはあの白衣の人だった。
「どうも、はじめまして。二年の三浦サヤです。おもに油絵を描いています。もし、モデルが必要になった・・・」
そこで、慌てて諏訪部長が三浦の口を押さえて、止めに入った。諏訪部長は小さな声で三浦に何か注意していた。
隣同士に座っていたマナブとカオリは何事が起こったのだろうと顔を見合わせた。カオリがマナブに小さくつぶやく。
「なんだろうね」
「なんか言いそうになったのを止めていたみたいだけど」
「たぶん、都合が悪いことでも言いそうになったからじゃないかしら」
「都合の悪いこと?」
「諏訪部長から聞いたことがあるのよ。美術部の部員は結構変わっている人が多いって」
マナブはなるほどと頷いた。ふと、三浦の視線に気が付いた。マナブが気が付いたことに三浦がにっこりと笑みを浮かべて、小さく手を振って答えた。
マナブは恥ずかしくなって視線をはずした。しかし、はずした視線の先がまずい方向だったことにすぐに気が付いた。
そこには鬼のような形相の菊池がいたのだ。
「えっ、なぜ」
思わず口に出してしまったが、菊池はそのまま横を向いてしまった。マナブはそのとき、殺意を感じたと思った。
_ki 14 page of 恋×2 <こいこい> 
なぜか敵対心むき出しの菊池の視線から逃れようとしたときに、奥にある美術準備室から誰かが出てきた。
ああ、諏訪部長が言っていた二年生だとマナブは思った。
彼女は絵の具で汚れた白衣に着替えていて、髪の毛をお団子にしていた。
しばらくして、美術室のドアが開き、また誰かが入ってきた。
1人は先日、入部届けを持ってきたときにマナブを部長と勘違いしたメガネの女の子。もう1人は黒い長い髪の毛の美人だった。
メガネの女の子はマナブを見つけると顔を下に向けて、そのまま、マナブの前を通り過ぎた。
黒髪の美人は軽く手で髪をたくし上げて、颯爽と美術室に入ると、諏訪部長のところに行った。
諏訪部長と何か話をしているところを見ると三年生のようだ。
諏訪部長がケイタイを取り出して時間を確認した。
説明会の時間が来たみたいだ。
「は~い、入部希望者はこっちに集合して」
マナブたちは部長の指示通りのすでに並べられた椅子に座った。
「まだ、二年が一人来ていないけど、説明会を始めるよ。先ずは、説明会に来てくれてありがとう。この説明会に来たとしてもまだ、これで確定したわけではないけど、ぜひ、美術部に入部して欲しい。今日は三年と二年の自己紹介と美術部の年間行事の説明をするのでよろしく。じゃあ、先輩たちの自己紹介から。自分は部長をしている諏訪です。男子の格好をしているが、まだ中身は女のままだ。出来れば、男性としてみて欲しい。おもに水彩画を描いている。何かわからないことがあったり、困ったことがあったらいつでも相談してくれ」
_ki 13 page of 恋×2 <こいこい> 
「ねえ、ねえ、ツキヨミ。もう一個、アイスを食べてもいいだろ」
「何言っているの。もう、アイスなんて一個もないわよ。冷凍庫の中にあったやつ、全部食べちゃったんでしょ」
「えー、もっと食べたい。買ってきて~」
「おい、アマテラス。お前はここに居候している身なんだぞ。もっと、畏まった気持ちにはならないの?」
「ちぇ・・・・」
いつもの、いや、つい最近からはじまった2人の会話だった。
ツキヨミと呼ばれるのは|巫 彩香<かんなぎ さやか>。有名なナイフ作家である。
アマテラスと呼ばれたのはナオキ。アマテラスの御霊が人の子に宿っている不老不死の男の子。
この2人は古の時代から「蝕」と呼ばれるものや、「鬼成り」と呼ばれる殺人鬼を退治してきた神の使いのようなもの。
京都で焔玉を手に入れて、過去の記憶が蘇った彩香は今まで職場があった東京から奈良の山奥の一軒家に引っ越してきた。
焔玉を手に入れるときに仲良くなった烏守美紀の実家がこの近くにあることもあり、東京の空気も飽きてきたから、という、もっともな理由を作って越してきたが、実のところ、以前、というか生まれ変わる前に住んでいた地が奈良だったから引っ越してきたともいえる。
詳しく説明すると彩香ことツキヨミは人間の体に焔玉に宿されたツキヨミの御霊が吸収されてその力を発揮する。
力とは刃物を使い鬼成りを殺しその焔を回収したり、蝕をアマテラスが宿っていた鏡に封印する力のことである。
ただし、元は人間である。寿命が来ると死んでしまう。
それなので、焔玉に宿ったツキヨミは新たな宿主、いわゆる、生まれ変わりが出てくるのを待つことになる。
それは数日で現れたり、中には100年も生まれ代わりが現れないこともある。
そのため、焔玉を守る役目をアマテラスが担っている。
_ki prologue of 焔喰い 黄泉比良坂(よもつひらさか)の鵺(ぬえ)
しばらくして、担当者らしき人間が僕たちのところに歩み寄ってきた。
「広報担当の木ノ内と申します」
そういって、名刺を二人に手渡した。
その瞬間、建物全体が地震にあったようにゆれた。
「なんだ」
僕は辺りを見回した。次の瞬間、先ほどとは比べ物にならない衝撃が襲ってきた。
僕はとっさに朽木をかばってその場に伏せた。
「坊や、大丈夫?」
不思議と冷静な口調の朽木だった。
「だいじょうぶですけど、一体何があったんですか?」
「先を越されたらしいわ」
「もしかして銅山の仕業?」
「だと思うわ、さあ、いつまでも抱きついてないで、銅山を追うわよ」
「あっ、はい」
とっさの出来事のためか、僕は朽木をしっかりと抱きしめていた。そして、手を解いて、立ち上がった。
「木ノ内さん、本殿の場所はどっち?」
広報の木ノ内もふらふらしながら、立ち上がり、建物の奥のほうを指差した。
「木ノ内さんは警察と救急に連絡を入れて。坊や、いくわよ」
僕と朽木はガラスの散らばったロビーを横切って、奥へと向かった。
_ki 37 page of 緋色の骨
朽木は助手席に乗り込む僕に向かって聞いてきた。
「坊や、その地図の二箇所のうちどっちに行けばいいの?」
僕はしばらく地図とにらめっこしながら考えた。
「たぶん、たぶんですけど、こっちのほうかな」
「こっちって、どっち」
「誰もが知っている有名な組織の建物がある場所。友愛教総本部だと思います」
「なるほど・・・それは確かに緋骨のありそうなところね。もう一箇所はどうなの?」
「そっちには、これといって目立つ建物もないし、どちらかというと下町のようなところだから、場所の特定は近くに行かない限り難しいと思います」
「じゃあ、友愛教総本部に直行ね」
「でも、大丈夫なんですか?政界とのつながりもある宗教団体の総本山ですよね。はい、そうですかって、入れてくれるでしょうか?」
「そんなことわからないわ。出たとこ勝負よ」
いつもの朽木の答えだった。
車は友愛教総本部についた。朽木と僕は事情説明をするために受付で担当者を呼んでもらった。
建物の中には何人かの人間がゆったりと歩いている。服装はごく普通のスーツだから、はたから見るとただの会社のようだった。
_ki 36 page of 緋色の骨

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