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kage_hina's novels

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貴方が一度果てるまでに、私は何度狂えばいいのか。
わからないほどに、何度も何度も上り詰めて、もう無理だと口が動いて。
それでもその声で「逝け」と命じられると、体は素直に従ってしまう。

「出すから、受け止めろ」
終わりを告げる一言がようやく降ってきて、ずっとほしいのにお預けを食らっていた下半身の疼きを満たせる時が来た。
薬で眠らせた私の分身は、今日も起きる事なく眠っている。
眠った子に届かなくても、それでも。
そこで受け止める事にはきっと何か意味がある。

張り詰めた感触に引きずられて意識が下半身に集中しているその時に。
貴方の指がもう一度首に絡む。
今日はもうおしまいだと思っていたから、完全な不意打ち。
絞められて、絞めつけて。
二人で一緒に逝ける時がやってくる。



飛んだ意識が返ってきた。
頭はクラクラするけれど、視界はハッキリしている。
頭に血が巡りだしてどのくらい経ったのか。
貴方は私の体に相変わらず覆いかぶさっている。

「腕…痛い…」
最初に口にするのがこれってどうなんだろう。
なんてわかってはいても、何を言っていいかわからなくて、いつもいつもこんな事を口走ってしまう。
「あの空間」が終わってしまえば私はいつもどおり、歪んだ自分は相変わらず心も歪んでまっすぐではいられなくて。

解かれた腕に血がめぐっても、まだ冷たい指で首をさする。
意識が落ちたなら、きっとあるはず。
鏡を覗き込んで首を映すと、やっぱりあった。
赤い、指の痕。
くすり と笑みが漏れる。
しばらくはあの空間がない日常でも、私は貴方に縛られていられる。

快感と安堵で満たされた体は程よい疲れを訴えていて、縄の片づけをしている貴方の横で私はベッドに沈むのだった。
kage_hina epilogue of 【影雛小説】「縛」 #khnovel (完)
足が邪魔にならないように、自由にできるように。
足だけ拘束を解かれて、貴方の好きに足を開かされて膝を折り曲げられて。

受け入れられる限りの奥深くまで。
貪欲な私の口は入り込んできたものに口付けをしようと下に下に下がっていく。
嬌声をあげる私の口を片手で塞いで、もう片方の手で私の肩を抱いて、覆いかぶさる貴方の熱に溶かされる。


口にあったはずの手がいつのまにか首に回って絞めつけられていく。
頭の中心が痺れて、視界が薄くなって…。
咳き込む度に「あぁ、また締まるな」という貴方の声が耳に降ってくる。
もう少しで、後少しで…そう思った瞬間に手は首を離れて、クリアになっていく視界に映るのは、貴方の意地悪な笑み。
「これ以上壊すのは、お前が俺を必要としなくなった時…だな」
いつもの言葉。
これを聞くと、安堵と、少し残念な気持ちが入り混じる。
まだ、この空間を必要としてもらえるうれしさと。
まだ、本当に望むものはもらえない寂しさと。

ゆっくりと貴方が腰を動かし始めて、私は残念な気持ちを忘れてしまうから、私の「本当の望み」なんていうものは、実はそんなに大きくないのかもしれないけれど。
快感に流される程度の望みなのかもしれないけれど。
それでも、首に指が回る度に期待する私に、ギリギリを与えてくれる。

いとおしい手が、いとおしい指が。
kage_hina 3 page of 【影雛小説】「縛」 #khnovel (完)
「さぁ、できたよ」
耳元で囁くその一言に私は我に返る。
縄の感触と匂いは私の頭の奥深くまで侵食していて、声をかけてもらわなければ、きっとそのまま何も見えない世界に沈んでしまうんだろう。
下に向くように固定した私の顎を無理やり引き上げて、私を見る目。
冷たい視線が私の中を覗き見る。
私の望みを探り当てたみたいに一瞬目の光が煌いて、でもすぐにまた冷たい視線に戻る。
「興奮…しているな」
「下着がほら、染みになっている」
「こんなのがいいのか、こんなもので気持ちよくなるのか」
肯定も否定もできない私の口は、ただ空気を必死に取り入れようと酸欠の金魚みたいにパクパクと開いては閉じる。

「こんなものでよくなるのなら、私はいらないな」
そう吐き捨てるような言葉が聞こえて、私の体は床に投げ出される。
転がされる。
離れる視線と遠のく気配。

「貴方がほしい」なんて口にできるものなら、もうとっくに口にしている。
私はそれほどまでに、自分の気持ちを形にする事もできない不器用な人間で…。
だから、もがく。
床を這う。
不自然な形のまま、貴方を追う。

無理やり視界を上げて貴方を追って、見つけたらひたすら這う。
微塵も動けていないかもしれなくても、それでも行動する事で貴方を欲する。
私にはそれしかできないから。


もがく私に近寄る気配がして、私の髪に手が触れる。
軽く撫でたその指は、私の肩をしっかり掴む。
腕の中に抱き寄せられて、冷たい床で冷えた私の体は貴方の熱をハッキリと感じられて、幸せな気持ちが私を満たす。


「私がほしいか?」
低い声で聞かれてゆっくりと頷く。
「おねだりしたら、くれてやってもいい」
そういわれて、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

ワタシヲ アナタデ コワシテクダサイ

あぁ、やっぱり私はうまく言葉が紡げない…。
でも、貴方は理解してくれる。
だから私は、この歪が心地いい。
kage_hina 2 page of 【影雛小説】「縛」 #khnovel (完)
膝を折り、その前に頭を垂れて、腕を後ろに回す。
視界に入る畳を踏む足が見えて、私の横を通り過ぎて後ろへ。
後ろに回した腕が強い力でつかまれる。

あぁ、この感じ…。
私のほしい形は、ただ今この空間だけにしかなくて。

慣れた手つきで縄を裁くその手は、私の体を自在に折り曲げて伸ばして、縄をかけていく。
息を吸っても肺が広がりきらなくて。
おろせない位置に固定された腕が引きつって。
足首と縄で繋がれた首が私の視界を下に固定して。

不自由さが心地いい…。
捻じ曲げられた腕が、私の本当にあるべき位置。
胡坐をかかされた状態で固定された足が、私の本当にあるべき位置。
あるべき所におさめてくれる、暖かい手が心地いい…。
kage_hina prologue of 【影雛小説】「縛」 #khnovel (完)
部屋の明かりははじめから誰かを招くつもりだったように絶妙に落とされていた。
薄明かりの中、彼女は私をベッドへと座らせる。
「まだお酒、呑む?」
「もう、いいわ。それより、貴女に酔いたいもの。」
「じゃぁ、ルームサービスはもういらないわね。果物なら、あるけど。」
彼女が冷蔵庫から、カットフルーツを出してくる。
手の届くナイトテーブルに置かれると、なんとなく食べずにはいられない空気になってしまって、私はマスカットをつまんだ。
「食べさせて。」
言われるまま、皮を剥いて彼女の口に滑り込ませると、唇に触れた指先を彼女の舌がぺろりと舐める。
「ありがとう…。美味しい…。」
「新鮮なのね。」
「マスカットもだけど、貴女の指が、ね。」
そう言いながら彼女はマスカットの皮を剥いて、今度は私に、と差し出してきた。
それを唇で咥えると、彼女の唇に押し付けるようにキスをしてみる。
二つの唇に挟まれたマスカットが彼女の舌と共に私の口の中に転がり込んでくる。
お互いの口の中を行き来させているうちに、果汁を私たちの口にいき渡したその破片は少しずつ私たちの喉に流れ込んだ。
「本当、美味しいのね。このマスカット。」
「新鮮でね。」
「それに、貴女の唇も。」
もう一度彼女にキスをする。
今度は邪魔するものは何もなく、お互いの唾液の味がゆっくりと混ざり合っていくのを感じる。
脳に染み渡るような甘さはやわらかい唇と舌の感覚をより私に伝わらせていった。

彼女が唇をずらすと、頬、こめかみ、耳、そして首筋へと唇をゆっくり這わせていく。
「んっ…。」
くすぐったいような、心地いいような、不思議な感覚。
彼女は私が気持ちいいと思う場所の、気持ちいいと思うやり方を、しっかりとわかっているらしい。
「…っ…ぁ…。」
かすかな声の抑揚も見逃さない。
昂った瞬間に、的確にポイントを外されて焦らされた。
kage_hina 3 page of 【影雛小説】カガミアワセノセカイ #khnovel
「ねぇ?一人なの?」
いつもの仮面パーティー。
ここなら「顔」で選ぶことはないと思ってきたけど、話しているうちに結局何か気分が乗らなくて帰ってしまうそこで、いつもどおり声をかけられた。
振り向いた先には、真っ赤なドレスを身に纏ったスレンダーな女性。
この私が思わず息を飲む、艶やかな唇。
仮面の下を見たくて仕方がなくなるような不思議な高揚感。

「えぇ。一人なの。貴女は?」
「ふふ、私も。」
親しげに横に座ると、彼女は肩を寄せてくる。
甘い香り。
声も耳に心地いい。
「こんなところにいて一人なんて、お互いどうなのって感じよねぇ。」
グラスを傾けながら苦笑して見せると彼女は私に微笑みかけた。
「でも、貴女が一人でいてくれたから、私は貴女に声をかけることができたわ。」
「そうね。貴女みたいな綺麗な人放っておくなんて、今日の参加者の目は節穴だわ。」
くすくすと笑いあうと、どちらともなしにグラスを近づけて乾杯する。
「素敵な唇に。」
「貴女こそ、素敵な唇。乾杯。」

グラスをかわして暫く。
雑談に興じても、私から彼女への興味は一向に薄れる気配がなかった。
それどころか、どんどんと惹かれていく。
それは彼女も同じようで、寄せあう肩が髪が触れるほどに近くなって、どことなくお互いになにかを意識するような、そんな状態になるのにそんなに時間はかからなかった。

「貴女、今日はなに目当てなの?」
彼女に何となく聞いてみる。
「財界人のコネ?それとも、一夜限りの遊び?」
それを聞いて彼女はくすくすと笑った。
「私に見あう人がいるかなって。」
「いた?」
彼女はにっこりと私を指差した。
「ねぇ、女は嫌?」
「貴女なら大歓迎。」
私たちは手を取り合ってパーティーを抜けると彼女が取っている部屋へ向かった。
kage_hina 2 page of 【影雛小説】カガミアワセノセカイ #khnovel
「依存」という言葉がある。
あれは「他のもの」にしかしちゃぁいけないのだろうか?
自分に依存するっていうのはアリ?

自分が大好きなら、自分自身に依存することだってできるのよね?


だから、私は「ステディ」が存在しない。
だって、私より優れた人がそうそういないから。
言い寄る人は数知れないけど、一度も誰にも惹かれたことはなかったの。



そう、あの日…。
一人の人と出会うまでは…。
kage_hina prologue of 【影雛小説】カガミアワセノセカイ #khnovel
(another)

優しい表情は苦手だ。
それでも、可愛い猫に無駄な恐怖はいらない。
「もう少し我慢できんのか?」
その言葉を聞いて、猫の目から恐怖が少しずつ消えていく。
ほっとした顔に戸惑いが混じる。
一呼吸置いて返ってきた猫の返事は「努力します。」
その努力とやらが実る気配はなさそうだが、まぁいいとしよう。
kage_hina 20 page of 【影雛小説】主と飼い猫の想いの交差。  #khnovel
(another)

倒れこみそうな猫の身体を掴んだ髪を引っ張ってこちらを向かせてやる。
「ご主人様…」
声にはなっていないが、猫の唇は確かにそう呟いた。
状況を把握したらしい猫の表情が恐怖に引きつる。
あぁ、またか。コイツはまた、「飛んだ」事を反省し始める。
そこが反省する場所じゃぁないのだがなぁ…。

それでも私は表情を崩さない。
猫の反省は聞いてやらないといけないと思っているからだ。
「申し訳ありません」とだけ謝る猫の目は怯えていて、これ以上この顔で脅すと自己嫌悪で一人マイナスの感情に囚われて苦しむ事だろう。
まったく面倒なヤツだ。
私はゆっくりと表情を崩す。
できるだけやわらかく。
kage_hina 19 page of 【影雛小説】主と飼い猫の想いの交差。  #khnovel
(main)

頬に激しい痛みが走る。
不意に食らった平手の衝撃で、身体ごと倒れこみそうになったのを掴まれた髪に引っ張られた。
倒れこむこともできず手をついて、そこでふと気づく。
私…意識なかった…?
顔をあげるとご主人様の顔が見える。
無表情のご主人様。
怒っていらっしゃると直感。
恐怖が走る。

「も…申し訳ありません!」
思わず口にする。
「何が」かはわからないけど、確実に私は意識を飛ばしている間にご主人様を不快にさせてしまった。
「飛ぶのはいいが、もう少し我慢できないのか?」
ご主人様の表情が緩む。
苦笑?
怒らせてはいなかった…?
「努力…いたします…。」
それしか言えなかった。
kage_hina 18 page of 【影雛小説】主と飼い猫の想いの交差。  #khnovel

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