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lovinkiller's novels

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先ず「世界は滅亡する」とは一体どういう事なのかについて掘り下げる事にしよう。
海沿いの自宅へと帰路に付いたわたしは、口の中に未だ残るおじやの微妙な貝柱味に眉根を寄せながら玄関を潜り、台所で酒の肴を用意している君江に声を掛けてからテレビの前に座った。
海豹を抱いたまま包丁を握る君江は裸エプロンにレインブーツを履いて箱ステップを踏んでおり、言うならばかまちを拗らせたビアズリーのように今日もエキセントリックだった。彼女の後姿を横目に、わたしは無言でテレビのリモコンを手に取り電源をオンにした。
lovinkiller 7 page of 「西暦23xx年」「世界は滅亡した」
「西暦23xx年、世界は滅亡した」
この書き出しで始まる物語を書く事がわたしの仕事だ。
筆を取ってもう丸一日考え込んでいるものの一向に良いアイデアが浮かんで来ないのは、凡そこの書き出し文が稚拙で在り来たりな物だからであって、こんな企画を通そうとする雑誌編集者の企画力の程度が知れるものよ、等とと高を括りつつも、原稿用紙にはプロットのプの字も書き込まれていない現状には少々の焦りを感じていた。
担当者が言うには、わたしの他に9人、合計10人の物書きに同じ依頼をしているらしく、その事実も焦燥を煽る結果となっていた。一文字目を書き入れる踏ん切りの付かないわたしは、考え事をする振りをして徐に立ち上がった。
lovinkiller prologue of 「西暦23xx年」「世界は滅亡した」