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  二〇〇七年六月二九日

 こうして筆を執るのは随分と不慣れであり、幾分見苦しい筆跡に終始してしまうだろう、どうか許して欲しい。私は今まで手紙というものを書いた事がないのです。私の愛する菱形さん、貴方がこの日記を読む可能性はおよそゼロに近いでしょう。私は無学で、無教養で、苛められっ子だった一人の大学生です。気持ち悪いと罵られ、散々な目に会って来ました。生徒達は私を貶めるのではなく、私の母を毎日貶めていました。父は隣国で土方の建設業の社員でした。私が中学一年の頃、父はクレーン車を運転しながら、ありとあらゆる建物を壊してきました。私の心は決して晴れやかではありませんでした。学校の事を話しても、苛めの事を話しても、きっと分かって貰えない。今でこそ割り切って思えるのですが、父も母も、当時の私に鈍感に過ぎていたのです。間もなく私は不登校となりました。母はまず「学校を休むなんて、とんでもない!」と傷ついた私に向って叫びました。父は私ではなくフォークリフトを愛していたのではないかと思える位、私に無関心でした。母は両手で顔を蔽い隠し、うっすらと涙を流してくれているようでした。私の事を知ってもらう為には、心の傷を抉り取りながらも包み隠さず話し、それでいて「私が何故、菱形さんを好きになったのか」を伝えなくてはなりません。貴方の姿を見つける度に、私はほっと溜息を洩らし、初心な魂は微かに動揺し、ふわふわと妄想に浸っていたのです。驚いたでしょう?人間なんて、何を考えているか分からない生き物です。

 君がペルシャ猫の様に友人とじゃれあう姿を思い浮かべながら、君の純真を信じていたい。
meiroizm 29 page of きみとぼくの筆裁き
 本日のお題「台風」「広告」「台本」

 「私を警察に突き出すか、私と血みどろの殺陣劇を演じるか……それとも君は平和的な解決を望むのか……総ては君の所掌範囲である」
 「無論だ」
 (素っ気ない態度でヴァイルは答える)
 「干からびた原野をくぐり抜け、ハリケーンの荒れ狂う大海原を越えてきた。道中では虎に遭い、ある時は鯱に囲まれた。幾度も自身の命を諦めた。しかし私はようやく、母の元へ辿り着くことが出来たのだ!!」
 (双鉾を見開き、膝を付き、懇願するガゼット)
 「ふん、黙って聞いていれば、お前はまるでこの国の学校教育に使われそうな冒険物語を経験したようだな。一体何処の演出家がお前の為に書き下ろした台本なのか、非常に興味深い」
 (黒のヴェールの裾を指先で摘み、隙間からガゼットを見下ろす)
 「信じてくれ、友よ!!」
 (ヴァイルの足元に縋りつく)
 「貴様、穢らわしい真似をするんじゃない!!その頬に刻まれた烙印の意味を忘れたのか!!貴様はもうこの国の人間ではない。貴様は母君にも、その先祖たちの顔に泥を塗り、いけしゃあしゃあと生き永らえてきたのだ」
 (踵を返し、コツコツと木靴の音が響き渡る)
 「安心しろ、貴様の命は奪わぬ。こんな場所で悲鳴をあげられては堪らぬ。知っているか、貴様が逃亡した際、父と母を嘲笑し、売国奴として吊るし上げるビラが巻かれたことを。議員たちがこぞってスケープゴートを求め、貴様の先祖達が広告塔として活躍していたことを、貴様は知っているのか」
 (絶望に彩られた表情は更に曇り、黙りこくって蹲るガゼット)
 「貴様に残ったその小さな灯火、その恥辱を雪ぐ時間に充てよ。安易に考えるな、今の貴様の命など鼠にも劣る。だからこそ、貴様の覚悟を示せ。私一人では庇いきれぬ。おぉ、名を馳せたアロンソ家の最後の一人ガゼットよ、お前に精霊達の御加護があらんことを!!」
meiroizm 10 page of 三題噺シリーズ
 本日のお題「船」「電話」「ネトゲ」

 「世界にとって最高な『もの』とは、一体何だろうね」
 昨日食べたカップラーメンの容器が、デスクトップパソコンの脇に置いてある。
 残り汁から、添加物、着色料を感じさせる独特の匂いが、存分に室内に充満している。
 「いやぁ、答えにくいというか、何というか。私が分かるのは、『もの』とは個別的な個体や出来事を指すのではなく、一般的に定義としての『もの』という事くらい、でしょうか」
 「いい線だね。形而上学的にいえば、世界は恒常不変の『あるもの』の流れに沿って、生きとし生けるものは生きている。トンビがタカを産むなんて、現実ではあり得ない。生命体全ての根源的な法則に逆らっている事になる。『あるもの』とは『有』と同義であるからね」
 
 ある時、『お前の言葉は棘々しい』と言われた。
 直そうとは思っているのだが、表情豊かな人間ではないため、どうしても誤解を招くケースもしばしば。
 Skype通話が発達して以来、見知らぬ知人から旧来の友人、そして前述した大学教授とも、数時間単位で話し合う機会も増えた。

 「木内君、先日の映像流出事件、君はどう思うかな?ツッコミ所が多くて困るのだが、取り敢えず僕が思ったのは、貧弱な漁船で体当たりなど、彼らは命が惜しくないのかね?皮肉にも中国人船長の操縦技術の巧さが引き立っていた様に感じたんだが」
 「そーっすね。アップした方は義憤に駆られたのか、いやでもそれ以上に某国会議員の大きな戦略かも知れないかなと。全て既定事項に沿っている、なんて考えている人も恐らくいるでしょう。それ以上の事は言えませんね。僕は右でも左でもありませんから…」

 バーチャルな世界で生きている以上、生々しく思えなかった。
 ネトゲの世界でも、リアルの世界でも、僕の言葉の棘は治らない。
 それだけが、真実だ。
meiroizm 9 page of 三題噺シリーズ
 本日のお題「魚」「王子」「恋愛」を使ったファンタジー小説を書きなさい。

 「アイス・ストーム」
 氷混じりの霙が魚群に襲いかかる。
 たまらず稚魚たちは拡散すると、内奥部に潜んでいた赤い小魚がぽつんと一匹、水晶のように澄んだ瞳とは対照的に、きょろきょろとせわしなく回遊する。
 「王子、王子!聞こえているでしょう、聞こえているんでしょう。何を下手な稚魚のマネをしてるんです!!」
 そそくさと退散しようとする稚魚。
 「聞き分けのない子ですね。何ならここで発火魔法を唱えてみるのも面白そうですね…」
 髭のふさふさしたアザラシの呟きに肝を冷やし、稚魚は咄嗟に解除呪文を唱え、ボンッ!!とその姿を現した。
 糊のきいた白のブラウスに、学校指定のグレーの下地のチェック柄のスラックス。
 ピンクと群青の水玉模様のネクタイといった中性的な服装とは対照的に、燃えさかる焔の輝きを瞳に宿した少年が、、少し機嫌が悪そうに佇んでいる。
 「ちぇっ、オイラの呪文をこうも簡単に破るなんて…さすがミシェル先生」
 「生徒に騙される教師がどこにいますか!!」
 激昂した感情とは裏腹に、叩こうとしたアザラシの短い手は王子の頭頂部には届かなかった。
 「へへん、今日は捕まっちまったけど、まだ見ぬフィアンセに巡り合うためには、さっさとこの城なんか抜け出さねーとな」
 「…どうやら、きついお仕置きが必要ですね…。父君の直命もありますし、ここは然るべき処遇をとらせて頂きます」
 目の据わった先生は、背中からゴソゴソと何か取り出すと、王子に向けてクラッカーを発射した。
 王子の眼前には、まるで蜘蛛の巣のような網がびっしりと写る。
 「えっ、えええええええええ!!!!」
 既に人型に戻った王子にはなすすべがなかった。
 「皆様が帰りを待っていますよ、カレン=イシマエル王子」
meiroizm 8 page of 三題噺シリーズ
 「『私の理性はあなたのやさしい火に奪われた。
 そんなにもあなたのすばらしい美にまなこくらみ、
 誠をつらぬき通そうと、それ以来
 他のどんな眼もみたいとは思わなかった。
 他のどんな暴君の拍車にも刺激を受けず、
 他のどんな思想も頭に宿らず、
 他のどんな偶像も私は心にあがめない』_ふん、結構なことじゃないか」

 黒のアタッシュケースの中に忍ばせていた数冊の四条畷文庫。
 無造作に取り出した一冊は、古本屋のラベルが表紙に付着した『ロンサール詩集』であった。
 ふと眼についたその短編集の一節には“カッサンドルのソネット”と銘打たれていた。

 「ほう、これはなかなか、さぞかしこの時代の人間達は、目の前に流れる河のせせらぎを眺めながら、花を摘み取り、散文詩を書き連ねつつ想いを馳せていたことだろうねぇ」
 いみじくも哀れに思えた。
 僅か数行の詩によって、このぼくが励まされるなんてね。
 いやいやそれは良しとしよう、それよりも問題は、ぼくはフランスの地理も歴史も知らぬ小童なのに、あたかも神の見えざる手がぼくに働きかけたように、神がぼくを救ってくれた_そんな感覚を覚えたことだ。
 迫害の手から主・ヨシュアを助けることの出来なかった弟子レビ・マタイの様に。
 結構なことじゃないか。
 その救いはおそらくぼくを満たしてくれるだろう。
 安住の地へと誘ってくれるのだろう。
 しかし、しかしだ、永遠の星からぼくたちを見下ろし、悠々と宇宙の背後に流れる神達よ。
 
 ぼくは、きみに想いを告げなくてはならない。
 
 それはぼく自身の反省、難しくいえば自戒という意味をもって、きみの前に現れなくてはいけない。
 ひとつの手紙に滾らせた、ぼく自身の責任をもって記した、ぼく自身の筆捌き。
 どうぞ、とくとご覧あれ。
meiroizm 28 page of きみとぼくの筆裁き
 こんなに懊悩してもきみに届かないなんて。
 こんなに怯懦で下劣な心の持ち主であるぼくが、
 こんなに懊悩して、いくら登攀しても、
 きみの愛情に触れることはついには叶わなかった。

 しかし、ぼくの旅路はこれで終わる訳ではない。
 
 きみの戴冠儀式が必要ではないか?
 きみの心が青空のように澄み渡るように。
 きみの心に素晴らしい調和が産まれるように。
 ぼくの運命を、ぼくの魂を、有り余る情熱をもって滾らせよう。
 きみの純潔とともに、新しい旋律とともに。

 気付けば太陽は西へと傾きつつも、尚一層激しく高く燃え続けている。
 雨上がりのアスファルトを容赦なく照らし続けている。
 カフェテリアの隅でぽつんとひとり、頬杖を突きながら学生達の往来を眺めている。
 脚をクロスさせ、倦怠感を漂わせながら、仏頂面でぼんやりと虚ろな表情で、ひんやりとした麦茶で喉を潤した。
 熱が放散され、感覚神経を目覚めさせる。

 人間の頭の中は宇宙よりも広大であり、又深淵に満ちている。

 左手首に装着したアナログ時計を覗いてみると、既に十五時を過ぎていた。
 ぼくは長身痩躯で内弁慶であり、また虚栄心も強い。
 そしてまた、卑屈になることも多い。
 しかし、きみへの感謝だけは忘れはしない。
 きみが存在したからこそ、ぼくはこの世界を愛することが出来たのだから。
 ぼくのやるべき事は絞られた。
 それはきみに対して、「敬意を払う」ということだ。
meiroizm 27 page of きみとぼくの筆裁き
 本日のお題「犬」「遊び人」「980円」

 「なぁ、文学って、言葉を使った芸術作品だって言葉、聞いたことあるか?」
 俊哉は低い姿勢から僕の顔を覗くようにして、唐突にそんな事を聞いてきた。
 「あぁ…?いや、知らねーけどよ…つか次の授業のリーディングの予習まじで済んでねーんだからなっ。熊田はまじで性悪だからな。予習やってきてなさそうな奴の顔色なんざ一目で見抜いてくっからな…」
 俊哉は勢い良く、鳥の蒸し焼きとマヨネーズソースを挟んだサンドイッチを頬張りこんでいる。
 「なぁ、もしゃもしゃ食ってんのはいーけどよ、人をパシリにしたお駄賃はちゃんと払ってもらわないとなー」
 今日帰ってくるであろう俊哉へのツケは、総額980円也。
 特売品みてーな額に膨らんだ。
 それも今日までと決めていた。
 俊哉は要領が良すぎる。
 さらに桁数が一つ増えると笑えなくなる。
 「ん、んぐっ、んだよー人が気持ちよく朝昼飯を堪能している最中にそんな金の話なんてよー。そんな話をしたら友情が壊れるぞー」
 「取り敢えず朝飯ちゃんと食ってこ…じゃなくて、今日のサンドイッチ代220円に今週のジャック代240円にねんどろ○どぷちのガシャポン代300円そして13日前の昼飯代220円総額980円、今日こそ耳を揃えてきっちり払ってもらうかんなっ!」
 「……え、何、聞こえな」
 人を小馬鹿にしたような顔で俊哉が言い終わる前に、俺はコイツの右ポケットの膨らみに手を伸ばした。
 何だコイツ、新渡戸稲造なんか持ってやがる。
 貧乏人から搾取しておいて、結構な身分だわ。
 遊び人だわー俊哉さん。
 「お前なぁ…人が飯を食っている無防備な状況にサイフを漁るとはよ…見損なったぜ…お前は餌があれば迷いなく喰らいつく野良犬だな」

 この出来事がきっかけで俺と俊哉の友情に亀裂が走り、その裂け目は未来永劫修復されることは無かった。
meiroizm 7 page of 三題噺シリーズ
 燃やしたい薔薇、赤い薔薇。
 赤い花、罌粟の花。

 ご無沙汰だったね諸君、ぼくはつい最近、ロシア出身のガルシンという作家の「赤い花」という話を読んだのだよ。
 それはもう鮮烈でね。
 まごう事無きまでに、全てが嘘で書かれていてね。
 こんな話があっていいのかと沁み沁み思っていたよ。
 主人公は狭窄衣を身にまとうほどの精神病患者なのだが、彼は花壇で罌粟という花を見つけるのだ。
 罌粟という花からは、どうやら阿片が出来るらしい。
 彼の不健康な妄想は、その花を世界の敵である、世界を滅ぼす『悪魔』であるとの結論に至ったようだ。
 そこには一切の疑いがなく、ストイックに内的精神の中で、尚且つ自由自在に悪魔と戦うのだ。
 それは生き死にを分つ壮絶な戦いであった。
 彼はその赤い罌粟の花を毟り取り、最後には彼の内的精神は満足される。

 そんな結末ではなかった。
 彼は惨めであった。
 彼はつまらない人間であった。
 物事を多角的に観ることが出来ない、一つの視点に凝り固まって他の意見を受け入れようともしない。
 彼は妻帯者であったのだろうか。
 彼をこの世界に産み落とした母は既に亡くなられてしまったのか。
 謎は深まるばかりで一向に、ぼくの頭を煩わせてくれるのだ。

 いやね、きみ。
 ぼくはこの作品内に登場する人物にもしかしたら近いのかもしれないね。
 少なくとも今までの人生の中で、ぼく自身を傍観者として世界を位置づけた事は今までにないし、これからも無いであろう。
 しかし、この発想を捨て去るのか、肯定するのか、それが出来ないからぼくは自嘲せずにはいられないのだがね。

 もしぼくが、きみの前に現れたとき、ぼくは一糸纏わぬ姿でいたとしたら、きみはぼくを受け入れてくれるであろうか。
 こんな事を考えてしまうのがぼくであり、しかしそれはきみとの唯一の接点になっているのだ。
meiroizm 26 page of きみとぼくの筆裁き
 「それじゃ、来る時また連絡してや。その間掃除なり夕飯の支度なりしておこうと思いますわ。そんな感じで…良いか?」
 「うん、御免なさい。突然こんな話をされても驚かせるだけだったと思うし、実際引いたと思う。でも私はこんな奴なんだよ。御免なさい。ただただ只管に御免なさい。家に行かせてもらえれば、何でもするからね……」
 ゾッ。
 「………うーん………。また後で電話しますから。こっちから掛け直すわ……」
 「うん、またね。無理強いは良くないよね。メロの都合よい時間帯で良いからね。明日でも明後日でも良いんだからね。急に御免なさいね。私そんな気の長い人間じゃないんだ。いつも無表情で、感情を押し殺して、親の言うとおりの人生を送ってきて、お父さんに褒められたいってずっと思ってて、今でも思っているし、でも念願叶わず詰め込み教育乙って感じで東都大学には落ちちゃうし本当だらしのない奴だよ。私この大学の学生皆見下してるよ。だってバカだもん。メロは違うよ。メロは別格だし比べちゃいけないと思うよ。そう、だから私こんなつまらない女なんだよね」
 「……………………………………………………………………………」
 「そしてこんな辺鄙な所で気ままに学生生活を送れると思ったら大間違いで、特別奨学生として私は入学してるから、四分の三は優評価を貰わないと奨学生じゃなくなるの。そんなことになったらお父さんに叩かれる。お前は何をしに大学に入ったんだ、東都大の連中を見返してやらないのか、って。これでもね、冬の夜空に玄関先で五時間静座させられたことがあるんだ、ヘヘッ。お母さんが寒いでしょうって言ってブランケットを渡してくれて、その生地を下に敷いて静座してたんだよ。その境地になったら土から声が聞こえてくるんだよ。凄いでしょ。あ、そろそろ長電話に過ぎると思うから、この辺で切るね。今日行くか分かんないけど、それじゃまたね」
meiroizm 25 page of きみとぼくの筆裁き
 「ほんで、今日来るんかいな。来るんやったら、部屋掃除しておきたいし、今すぐに、って訳にはいかんけどな…」
 まぁ、断る理由なんかないしな。
 
 そろそろ、時期的にも、セックスはしておきたい。

 「ほ、ほんまに……?……う、嬉しいにゃー☆ハハハッハッもう絶対断られるって思ってたんだよー?こんな寸胴むっくり雛型の女なんか絶対メロと釣り合ってないしそりゃもしかしたら妬まれているかもしれないよね、だってメロ格好良いもん。こんなメンヘラ女意味分かんないしでもメロは好きになってくれたんだよね。いいよ全然、ほんのちょびっとだけでも。だけど実は私は身を焦がす位に好きなんだよ。負担に思うかもしれないけど全然そんな必要もないよ、だって付き合いたてだもん。あ……でもメロの家に上がるってことは……え、えーと、どうしよう………私、実はお泊りなんて中学以来で………はぁっ…な、なんかドキドキしてきたよぅ……い、いいのかな……やっぱり辞めたほうがいいのかな……こんな嘘ばっかで愛想の無い笑えない私を泊めてくれるなんて……ぎゃ、逆に怖いよぉ……」
 
 「……うん、俺はお前を泊めるなんて一言も言ってへんけどな!!」
 なんつー破壊力や。
 末恐ろしいわ。
 某アニメみたいに、この子のポケットか鞄にはホチキスや鋏といった、況んや間金属製の尖った何かを所持しているだろう。
 うん、泊めるのは危険行為極まりないな。
 無理。
 無理無理無理。
 こんな結体で野暮な女、泊めれる奴はいるか?
 正味分からんよ。
 歩んでいる道は余りに逸れている。
 
 僕がアルバイトの延長線で、お客と性的関係を持った事を、彼女が知ったとしたら。
 残滓は一日やそこらで片付くものやない。
 雌特有の匂いってのがあんねん。
 
 少なくとも、僕の脳裏に昔親父が連れてきた娼婦達の残影は今でも色濃く残ってる。
meiroizm 24 page of きみとぼくの筆裁き

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